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些細なことをくよくよと考えてしまう。
周りの目が気になって、やりたいことを諦めてしまう。
そんな方にこそ、読んでほしい一冊があります。
宮島未奈さんの『成瀬は都を駆け抜ける』です。
「西武大津店に毎日通って中継に映る」という挑戦から始まった「成瀬シリーズ」は、本作で第3作にして完結作となります。
2024年本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』から始まった物語。成瀬はいつも「もっと自分の思うように歩めばいい」と、その姿を見せてくれます。
そんな成瀬の姿を見ていると、「もう少し自由に生きてみたい」と自然に思えてくるのです。
この記事では、できる限りネタバレを避けながら、『成瀬は都を駆け抜ける』の魅力や、実際に読んで感じたことを紹介していきます。
『成瀬は都を駆け抜ける』のあらすじ・概要
| 発売日 | 定価 | 出版社 | ページ数 |
| 2025/12/1 | 1870円 | 新潮社 | 240P |
京大生となった成瀬あかりは、新たなステージに進んでも変わらない。
そんな成瀬の前に現れるのは、やはり一筋縄ではいかない個性豊かな人たちです。
活動内容がよく分からない謎のサークル「達磨研究会」。
叶わなかった恋に傷心する同級生。
そして、京都の地を通じて出会った簿記YouTuber。
成瀬の周りには、ステージが変わろうとも、いつの間にか様々な人たちが集う。
そしてある日、幼馴染の島崎のもとへ、成瀬から一通の速達が届く…。
成瀬シリーズ第三弾は、成瀬のこれまでの軌跡が新たな出会いや出来事と重なりながら、完結へと向かっていきます。
『成瀬は都を駆け抜ける』の魅力を解説
ここからは本書の魅力を深掘りして、
紹介いたします。
成瀬の「我が道を行く」生き方に惹かれる理由
成瀬シリーズは、なんといっても「我が道を行く」という成瀬の姿に支えられてきました。
そんな成瀬の姿に惹かれて、ここまで読み続けてきた方も多いのではないでしょうか。
しかし、ただ個性が豊かだから、あるいは強い人だからというだけでは、成瀬に惹かれる理由を十分に説明できないように思います。
読んでいて感じるのは、「成瀬は生きづらくないんだろうか」という疑問です。時に、個性は生きづらさに直結してしまうことがあります。特に成瀬の姿を見ていると、個性を突き通すだけでは、どこかで壁にぶつかるのではないか。そんな危うさや不安さえ感じるのです。
ただ、成瀬は誰も寄せ付けないような強引さで、道なき道を進むわけではありません。
そして、成瀬が進もうとする道は、成瀬にとって、ごく自然な目的地までの最短ルート。
その道を、堂々と歩いているに過ぎないのです。その自然さこそが、読者や登場人物を惹きつける、強い力になっていると感じます。
「自分だって、もっと自分の思うように生きたい…」
成瀬の姿を見れば、そんな心の奥底にある気持ちが浮かんできます。
自分は本当はどんな道を歩きたいのか。成瀬の生き方に刺激を受け、何か一つでも、自分らしい道を歩んでみてはいかがでしょうか。
成瀬を受け入れる人たちが、成瀬の世界を広げていく
そんな成瀬には、自分のステージをどこに変えても、自然と仲間が集まってきます。
自分が行きたい道を歩むからこそ、その道で出会う人たちは、どの人も大切な存在です。年齢や性格、考え方が違ったとしても、成瀬は何のためらいもなく受け入れます。
それは、成瀬自身にも自分を受け入れてくれる存在がいるからなのでしょう。だからこそ、成瀬もまた周りの人を受け入れる。
成瀬には「仲間を”作る”」という言葉合いません。それぞれの歩んでいる道が重なったから、ともに歩もうとしているだけなのです。そんな自然な関係に見えるのです。
ここまで主人公・成瀬について語ってきましたが、成瀬シリーズの魅力は、成瀬だけではありません。
むしろ、成瀬のような個性をそのまま受け入れる、周りの人たちの姿にも惹かれます。
この作品は、成瀬のような個性のある人間を目指すべきだと伝えるものではないと思うのです。自分とは違う人を受け止める柔軟さや素直さ。それもまた、自分の人生を楽しくする方法なのかもしれません。
物語の中で終始スポットライトが当たる成瀬は、同時に周りにスポットライトを当てる存在です。
現実で誰かの個性をそのまま受け止めることは、そんなに簡単なことではありません。心ない一言で否定されてしまうこともあるでしょう。
「自分を受け入れてくれる人なんて本当にいるのだろうか」と思うかもしれません。
それでも、自分の道を歩いていれば、いつか自分を受け入れてくれる誰かと、歩む道が重なることがある。
成瀬の周りに仲間が集まっていく姿を見ていると、そんなことを信じたくなるのです。
成瀬を受け入れる仲間がいるからこそ、成瀬の世界は広がっていく。
そんな人との繋がりも、本作の大きな魅力だと感じました。
成瀬は日々の挑戦を、伝説へと変えていく
成瀬シリーズを読んでいると、自分が歩んできた道を、過小評価すべきではないと感じることがあります。
成瀬は、様々なことに挑戦し、その一つ一つを自分だけの「実績」にしていきます。
代表的なのが、「西武大津店に毎日通って中継に映る」という挑戦です。
一見すると、何の意味があるのか分からないような挑戦。それでも、成瀬にとっては間違いなく大きな意味があり、大切にしたいことでした。
そして面白いのは、そんな一つの挑戦が、3作目まで読み進めると、まるで「伝説」のように語られていることです。
これが成瀬なんです。
今作でも、「京都を極める」という目標を立て、そのために次々と行動を起こしていきます。
そんな成瀬の軌跡が、成瀬が成瀬であることを証明する名刺になっているのです。
歩んでいる道は、ただ消化していく日々ではありません。どれだけ小さなことでも、「やってみよう」と思ったことは、自分の人生に残る実績です。
一つ一つの挑戦が、自分が何者なのかを形作る大事なピースになっていく。
そんなことを、本作を読んで改めて感じました。
そう考えると、実績なんてものは、「やったもん勝ち、言ったもん勝ち」なのかもしれません。
『成瀬は都を駆け抜ける』の感想
まず最初に感じたことは、シリーズ完結が本当に惜しいということです。
成瀬のこれからの姿が、まだまだ見たい。3作目を読んで、その思いが強くなったというのが本音です。
そして、なぜ私は成瀬の姿にこれほど惹かれたのだろうと考えました。
それは、本来なら生きづらさを感じるような個性のある成瀬が、誰よりも堂々と自分の人生を歩んでいる。その危なっかしさを、いつも軽々と覆してくれる姿が清々しいからです。
「ありがとう、成瀬がいつまでも成瀬でいてくれて」と、心の底から思う瞬間に何度も出会うんです。
そして、自分の個性を大切にするということは、誰かに認めてもらうことではなく、まず自分自身がその個性を手放さないことなのだと感じました。
誰かに「それでいい」と言ってもらうのを待つのではなく、自分が「これでいい」と思える道を歩いてみる。
そうすれば、自ずと自分の人生には輝かしい実績が宿り、本作のように周りに自分を認めてくれる人たちが集まるものだと思います。
成瀬シリーズは完結しました。
でも、そのバトンは私たち読者に渡されたのだと思います。
私たちが自分の道を堂々と歩いていく番。そう感じさせてくれるシリーズでした。
宮島未奈さんの『成瀬は都を駆け抜ける』はこちらからどうぞ。

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