【感想と魅力解説】『明日、あたらしい歌をうたう』角田光代

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ご覧いただきありがとうございます。

今回ご紹介する一冊は角田光代さんの
「明日、あたらしい歌をうたう」です。

音楽に人生を救われた経験がある人なら、きっと深く共感できるはずです。
音楽に興味がなくても、「好きなことが人生を支えてくれる」という感覚を共有できる物語です。

そして、何があっても信じ抜きたいと思える人との出会いが、人生を変えていく。
沈んでいく人生が、たった一人との出会いによって引っ張り上げられることがあるのだと感じさせてくれます。

好きなことや大切な人を信じる気持ちは、人生を立て直す力になる。

何を信じていいのか分からなくなった方にこそ、ぜひ読んでほしい物語です。

この記事では、できる限りネタバレを避けつつ、その魅力を解説していきます。

皆様の読むきっかけになれば嬉しく思います。

『明日、あたらしい歌をうたう』のあらすじ・概要

発売日定価出版社ページ数
2026/2/261870円水鈴社204P

遺影として飾られている男を父だと聞いて育った新(あらた)

それは、カリスマ的なミュージシャンの写真でした。

そして、その写真には母親・くすかと父との二人の物語が詰まっていたのです。

誰の目にも映らず、孤独な子ども時代を生きていたくすかは、ある日一つの音楽に出会います。

耳にした時、たった一曲の歌に救われたのです。

そして、くすかが出会ったのは音楽だけではありません。
音楽を通じて、一人の男性との出会いが訪れ、恋が始まります。

しかし、その恋には、新の知らない「隠された物語」がありました。

すべてのピースが揃った時、まるで一曲の歌が完成したような感動が物語を包み込みます。

『明日、あたらしい歌をうたう』の魅力を解説

ここからは本書の魅力を深掘りして、
紹介いたします。

音楽が人生の景色を変える物語

音楽が人生の景色を変えてくれる。音楽に出会う前と後では、まるで別の人生を歩んでいるかのように感じる。

それが音楽ではなくても、読書や絵を描くこと、スポーツなど、自分の好きなことに置き換えてもきっと同じだと思います。

自分が”これだ”と思う好きなことに出会った時、その出会いには人生を変えるだけの力があると感じます。私はその実体験があるので、読んでいてその喜びを思い出し、心が満たされました。

初めて一曲弾けた時の喜び。
読書の楽しさを知った一冊。
試合の勝敗を決定づけた1つのゴール。

そういった心の底から「好きなものを好きだ」と実感する瞬間が、この物語にはあります。

幸せな人生を歩もうとした時も、その歩みを止めてしまいそうな時も、物語には常に音楽の存在があります。

くすかは息子の新に、好きなことを見つけるように言います。それは、人生において何があっても歩みを止めないための支えを持つということだと感じたのです。

まだ、自分が心の底から好きだと思えることがない方も、本書の物語を通じてきっと自分だけの”好き”を探したくなるはずです。

信じられる人がいることは人生の軸になる

くすかには、音楽とともに、もう一つ大きな出会いがありました。

あらすじでも明かされている通り、恋に出会ったのです。

ただ、この物語が描く愛の形は、恋愛という言葉では言い表せないほどの深いものだと感じました。惹かれ合ったきっかけは、音楽という共通点があったというシンプルなものです。

しかし、くすかにとっての音楽は、ある日、突然目の前に差し出された救いの手でもありました。そんな特別な音楽を共有し、沈んでいく人生からぐっと引っ張り上げてくれた人物に出会ったのです。

だからこそ、くすかには、何があったとしても一生信じ抜く覚悟がありました。

くすかの人生には“好きなこと”と、“心の底から信じたい人”という生きていくには十分すぎる軸を手に入れたようなものです。しかし、ある日そのうちの一つをくすかは失うことになるのです。

このあたりの詳しいことをここで語ることができないのが、なんとも惜しい。でも、誰かにネタバレの内容を聞くより、自分の目で読んでこそ、この物語の良さが分かるはずです。

気になった方は、ぜに手に取ってみてください。

すべての人生に贈られた応援歌

特別な何かで人生を支えるよりも、日々の小さな積み重ねで人生を支えたい。本書の物語を読み終えた時に、そう感じました。

もちろん、自分に何か特別な才能があるなら、それに越したことはありません。

ただ、何もなくても、それを嘆く必要はないと思います。自分の人生を支えるものは、日々の地道な歩みだと思うからです。

辛いことがあったり、上手くいかないことが多くても、忍耐強く一日一日を必死で積み重ねる。その積み重ねこそが、気づかないうちに自分の人生を少しずつ磨いていることになります。

そんな日々の中で、ふと流れてきた一曲の歌が一筋の光のように感じる時がくるはずです。

しかし、その一筋の光に気づかないまま通り過ぎてしまうことも、きっと多いのだと思います。その光は確かに頼りないかもしれませんが、必死に歩んできた人にだけ差し込む、称賛のスポットライトなのだと思います。

くすかが息子の新(あらた)に、遺影として飾っているミュージシャンを父だと伝える冒頭シーン。そこから始まった、どん底から這い上がっていく物語は、エンディングを迎えた時、まるで一つの曲が完成したような感動的なものでした。

本書は、すべての人生に贈られた一冊の応援歌なのかもしれません。

『明日、あたらしい歌をうたう』の感想

私は音楽に人生を救われた経験があります。だからこそ、本書の至るところで、音楽との出会いや音楽を通じて様々な人の繋がりができる喜びに共感しました。

それだけで、満たされる思いになったのは間違いありません。

ただ、この物語にはもう一つ、人生を支えてくれる大きな力が宿っているように感じました。音楽の力だけでなく、「自分を信じてくれる人が一人でもいれば、人は生きていける」ということです。

たった一人で良いんです。何があったとしても、一人の人間として変わらず信じてくれる存在がいるなら、それだけで人は生きていけるのだと思います。

そして、そう感じさせてくれる本書もまた、誰かの救いになるはずです。

新(あらた)もくすかのそんな強い想いに触れたことで、人生に最高の応援歌を得たような気持ちになったのではないでしょうか。

ぜひ、皆さんもこの応援歌のような1冊を手に取ってみてください。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

角田光代さんの『明日、あたらしい歌をうたう』はこちらからどうぞ。

また、不倫相手の子を誘拐し、逃亡生活を描いた角田光代さんの代表作の一つ。『八日目の蟬』には、許されない中で確かに見えた一筋の光があります。本書とはまた違った光を感じていただけるのではと思いますので、こちらも併せてご覧ください。

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不倫相手の子を誘拐した野々宮希和子3年半に渡る逃亡生活。希和子はその子の母になろうとした。罪の中に一筋の光が降り注ぐ…それは救いなのか、逃亡劇の終わりを予感するものか。読み終えた時に、読者が抱えるものは、どう捉えるべきか分からない感情かもしれない。

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