【感想とおすすめポイント】ドヴォルザークに染まるころ/町田そのこ

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ご覧いただきありがとうございます。

今回ご紹介する一冊は町田そのこさんの
「ドヴォルザークに染まるころ」です。

2024年11月20日発売。

初めて装丁(表紙)を見た時に、
思ったんです…

どこかで見た気がする装丁(表紙)に
ジワっと懐かしい気持ちがします。

遠く奥深いところにある
過去の記憶から生まれた物語。

人には息苦しさや絶望だって
必要不可欠なのかもしれません。

その中に感動や考えさせられる。
町田そのこさんの真髄と言えます。

ぜひ、この記事であなたにおすすめさせてください。

※できる限り具体的なネタバレを避けています。少しでも知りたくない方はご注意ください。

あらすじ

担任の先生が駆け落ちした。

駆け落ち相手は町の外からやってきた男。

私の人生はそのことをいつまでも
記憶していた。

そんな記録から始まる物語は
小さな町の出来事。

そこには様々なものを背負う女性がいる。

東京でバツイチ子持ちの恋人との
関係に寂しさを覚える看護師。

認知症の義母に夫とのセックスレスの悩みを
打ち明ける管理栄養士。

小さな町で、それぞれの人生を自分らしく
闘い、懸命に生きてきた女性たちの物語。

ショッキングな冒頭

この作品を読んだ多くの方が一行目に
“衝撃を受けた”と言います。

町田そのこさんの書き出しは
読者を力強く惹きつけます。

一瞬のうちに目の前の日常から
物語の世界へと引き込む力がすごいです。

本を買った時の高揚感と期待感を
冒頭で応えてくれる“安堵感”

しかし今作はその安堵感も吹き飛び
『Wow!(ワオ!)』という

自然に出ることのないリアクションが
自然に出てしまうような衝撃でした。

読者はショッキングな一行目に
強烈に後押しされ読み始めます。

そして、さらに続く“圧巻の序章”
この先に待ち構えています。

心に焼きつく圧巻の序章

この作品の一番惚れたのは、
冒頭文から続く序章部分でした。

“直視できない光景”
“どこか懐かしい情景”

流れてくる音も、目にした色も
心臓の鼓動までも伝わってくる。

そこにあるのはただの文字ですが、
五感が働くというのでしょうか。

1つのシーンに町田そのこさんの
筆力を改めて感じることになりました。

ただインパクトのある文章を
冒頭に置いただけではない。

この序章シーンで本の装丁、タイトル、
息苦しさすらも一気に繋がるような感覚。

すべてを閉じ込めたような
過去の記憶が焼きつけられます。

パンドラの箱から生まれた物語

そんな圧巻の序章で幕を開けた
今作の物語。

物語はそれぞれの女性の人生に、
焦点が当たっていきます。

自分が生きる小さな世界
息苦しさを感じる。

自分が生きる世界の閉塞感に
絶望する。

この感覚を登場人物と読者が
共有していくんです。

目の前の小さな世界で起きること。

ドロドロとした人間関係の中で起きる
様々な問題・軋轢。

しかし、男はこれを横目で、
見て見ぬふりの態度なんです。

男でも感じるこの腹立たしさ。笑
それを書く上手さもお見事。

こういった姿を容赦なく読者へと
突き付けていきます。

そして、その世界で闘う女性。
その世界で生きる術を身に付けた女性。

さらに、その世界から抜け出した女性。

過去の記憶というパンドラの箱から
溢れ出したような物語が印象的でした。

最後に

この作品を紹介する時には
序章部分の素晴らしさは欠かせない。

そして、そこから物語が始まるという
流れも印象的でした。

もちろん、そんな作品は世の中に
いくらでもあるでしょう。

しかし、焼き付けられるような感覚
になることは多くありません。

そういった“衝撃を受ける読書体験”
というのは大切ですからね。

それは人それぞれどの作品で
体験することになるかも分かりません。

是非、この素晴らしい序章と
女性たちの懸命な姿を読んでください。

最後まで読んでくださり、
ありがとうございました!

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