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ご覧いただきありがとうございます。
今回ご紹介する一冊は呉勝浩さんの
「爆弾」です。
『このミステリーがすごい! 2023年版』
(宝島社)
『ミステリが読みたい! 2023年版』
(ハヤカワミステリマガジン)
この2つのミステリランキングで
驚異の2冠に輝き話題となった1冊。
ただ、驚異だったのは内容です。
この本は恐ろしい爆弾魔を抱えています。
読んでみて、途中で嫌悪して閉じても良い。
無我夢中で読み進めても良い。
この記事で興味を持った方は、
是非手に入れてください。
2024年7月31日には続編が刊行されました。
では、あらすじと個人的なポイント、
感想をご紹介します!
※できる限り具体的なネタバレを避けています。少しでも知りたくない方はご注意ください。
あらすじ
東京、炎上。
「十時に秋葉原で爆発がある」
「ここから三度、
次は一時間後に爆発します」
些細な傷害事件で野方署に連行された男。
とぼけた見た目。
あっからかんと告げる、不可解な予言。
そして読者にも告ぐ。
この男。
この爆弾魔。
スズキタゴサク。
この男に戦慄します。
正義は、守れるのかー
嫌悪と戦慄のやり取り
物語は誰が犯人かを突き止めるものでは、
ありません。
もちろん、全貌を解き明かす必要はあり、
不可解な難問に立ち向かうわけです。
ところがこの物語の最大のポイントは、
ー嫌悪と戦慄のやり取りー
2回読んだのですが、些細な表情や心の動き、
何気ない雑談のような会話。
すべてを見逃すことができない緊張感
が全体を覆っています。
人間としての一瞬の甘さと隙があれば、
一気に引きずり込まれる戦慄の世界。
警官とのやり取りは小手先の
頭脳戦や心理戦ではないんです。
もっと人間の深層部分というのでしょうか。
深く暗い部分がステージとなり、嫌悪や不快感が
まとわりついて蝕(むしば)んでいきます。
それなのに、ワクワクしたりドキドキする
自分の存在にも気付くはずです。
ページをめくればめくるほど、
沼から抜け出せない感覚でした。
スズキタゴサクの正体とは
そして、最大の難問はこれです。
一体この男の正体とは何なのか。
これは自分なりに考えると
もう『ザ・人間』なんです。
ん~。
ん?って感じだと思うのですが笑
一周回って、人間そのもの。
この男が悪魔やモンスターのような
得体の知れない存在なのではないんです。
実は誰しも自分の中に
得体のしれないものを飼っている。
そんな気にさせられるのです。
無邪気なふるまいをするスズキタゴサクが
仮面を被っているように見えて、
実は自分たちの方が、
普段、仮面を被っているのではないか。
そうやってどんどん追い詰めてきます。
文字で読んでいるのに、スズキタゴサクの体臭が臭ってくる。
自分の中の不快な何かを吐き出したくなる。
そして、自分たちの心の中にも一つ。
そっと…爆弾を仕掛けてくる。
世の中が生み出した戦慄の爆弾魔。
人間の腐敗した本性。
それを体現しているのかもしれません。
最後に
続編では、法廷が舞台となります。
ここでスズキタゴサクという人間の
新たな脅威が生まれます。
そして、またあのやり取りが…
是非、こちらを読んでから、
続編も楽しんでいただければと思います。
最後まで読んでくださり、
ありがとうございました!
〇文庫版
単行本と装丁を見比べて、どう違うのか、
なぜ違うのか考察するのもおもしろいですね。
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