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ご覧いただきありがとうございます。
今回ご紹介する一冊は一穂ミチさんの
「ツミデミック」です。
第171回直木賞を受賞し、
大きな注目を集めました。
個人的には『スモールワールズ』を読んで、
短編集のおもしろさに気づき、
『光のとこにいてね』で一穂さんの
美しい文章に魅せられました。
そんな一穂さんが綴る今回の短編集。
仮に直木賞を取っていなくても、
やっぱりすごい…。
物語の内容がどうという前に、
解像度が非常に高いんです。
自然と読み手の想像力を働かせる
豊かな表現力で魅せてくれます。
では、あらすじと個人的なポイント、
感想をご紹介します!
※できる限り具体的なネタバレを避けています。少しでも知りたくない方はご注意ください。
あらすじ
■違う羽の鳥
大学を中退した優斗。
夜の街で客引きのバイト中に、
聞きなじみのある大阪弁。
その女は中学時代の同級生を名乗る。
死んだはずの同級生の名を…。
■特別縁故者
調理師の職を失った恭一に心なしか
冷たい態度の働く妻。
ある日、小一の息子である隼が
聖徳太子の旧一万円札を持っていた。
近所に住む老人からもらったという。
恭一は自分で使ってしまう。
翌日に得意の澄まし汁を持って
老自宅を訪ねるが…。
先の見えない不安や焦燥を募らせ、
人生はどこに辿り着くのかー
稀代のストーリーテラーが新たに紡ぐ
全6話の短編集。
人間の愚かさが詰まった物語
コロナのパンデミックにからめた
罪を組み合わせた“ツミデックス”
ここには人間の様々な愚かさが
表現されていました。
不安や焦燥に炙り出されるように
人間の危うさが表れる。
ただし、とんでもない人たちが
登場するわけではないんです。
普通の主婦だったり、
普通の中年男性だったりするんです。
それがコロナ禍の異様な世界で
つい、愚かな部分を露呈させる。
誰もがその愚かさや危うさという
罪の種を持っているということです。
どの話も2021~2023年に書かれ、
この時期にフォーカスされています。
6話それぞれがコロナ禍の様々な
話題・切り口で書かれています。
この時期は一気に時代が進んだ
とも言われました。
その頃に生まれた新しいものや
発想が物語を彩ります。
すごく良い話だなというものもあり
まさにコロナ禍のアソート作品。
解像度の高い文章力
登場人物のやり取りや心情の表現が
本当に秀逸だと思います。
例えば、夫婦がシャワーの水圧について
話すシーンがあるんです。
何気ないシーンなんですが、
絶妙なやり取りを挟んでくるなって。
思わず読みながら唸りました。
何気ないけど、すごくリアリティがある。
解像度がグッと上がる。
読んだら分かるんですが、
めちゃくちゃイラっときたりします。笑
男の自分が“物語の男のだらしなさ”に
腹が立つわけですから。笑
一気に感情を揺さぶってくる巧さは
本当にさすがなんです。
内容はもちろんなんですが、
この解像度の高い文章力は必見。
最後に
一穂さんの本の感想について
『上手い』『完成度が高い』
と聞くことも多いです。
文章はすごく読みやすく
なおかつ感心させられる表現。
自分たちが日常で目にしたけど、
通り過ぎているもの。
それを逃すことなく、
サッと網ですくっている。
そこに価値を見出している感覚が
そもそも素晴らしいのだと思います。
本当にまだまだ読み足らない。
もっと読みたい作家さんです。
是非、一穂さんの本を手に取り、
過去作も楽しんでみてください。
最後まで読んでくださり、
ありがとうございました!
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