【感想と魅力解説】最新刊『クロエとオオエ』有川ひろ

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ご覧いただきありがとうございます。

今回ご紹介する一冊は有川ひろさんの
「クロエとオオエ」です。

本作は『恋と宝石』をテーマに書かれた小説です。有川ひろさん自身が、神戸にあるジュエリーショップ「Moixx(モイメメ)」に実際に通っている中で、「小説として書きたい」と提案したことで誕生しました。

さらに、本作のクロエのキャラクターは、クリエイターの藍さんをモデルにしています。

また、有川さんと言えば恋愛小説でも高い人気を誇りますが、今回の作品は「ド直球のお仕事ラブコメ」として楽しめる内容になっています。この記事では、できる限りネタバレを避けつつ、その魅力を解説していきます。

皆様の読むきっかけになれば嬉しく思います。

あらすじ・概要

発売日定価出版社ページ数
2025/6/112200円講談社400P

「いや、ごめん要らないわ、これ」とプレゼントしたリングを突き返したのは、彫金を家業とする職人の娘・黒江彩(くろえ あや)

突き返されたのは、横浜で三大続いた宝石商(ジュエラー)の嫡男・大江頼任(おおえ よりとう)

二人はビジネスパートナーでありながら、「メシ友」でもあり、それ以上なのかもしれないという曖昧な関係なのです。

そんな中、頼任の店ではブライダルジュエリーがオーダーされます。クロエがそのデザインを引き受けたことがきっかけで、二人の恋模様だけでなく、美しく輝く宝石の世界が物語を彩っていきます。

本書の魅力を解説

ここからは本書の魅力を深掘りして、
紹介いたします。

心を奪う、美しく繊細な宝石の世界

本書は恋愛小説でありながら、まず心を奪われるのは美しく繊細な宝石の世界です。ダイヤやエメラルドなどの定番から、パワーストーンとして親しまれる鉱石まで、多彩な石が登場します。

「〇〇産のものは色の出方が違う」「内包物によって価値が変わる」など、宝石の世界の奥深さが惜しげもなく描かれています。

また、本書にはユニークな仕掛けがあります。作中で登場する宝石やジュエリーを、実際に確認できるようになっています。

想像していたイメージと現実のデザインの違いを見比べることで、デザイナー・クロエの独創的な感性に触れているような体験が味わえるのです。

そして驚くべきなのは、有川さんの“表現力”です。

Moixxのジュエリーは、従来のジュエリーにはない「自由さ」が特徴。その自由さを含めて、読者の想像を見事に導き、個性溢れるジュエリーが頭の中に浮かんでくるのです。

実際に確認してみると「想像と違った」ではなく「想像以上に良い」と思わせる。そんな言葉の力が、宝石の世界をいっそう魅力的に感じさせるのです。

宝石商として駆け出しのオオエ、そしてデザイナーとして歩み始めたクロエ。
二人が見せてくれる宝石の世界は、本書の大きな魅力の一つです。

やきもき必至の恋愛模様

もう一つの魅力は、何と言っても恋愛です。有川さんの恋愛小説は、とにかくやきもきするのです。惹かれ合う二人がグッと近づいたかと思えば、サッと距離を取ってしまう。

あらすじにあるように「いや、ごめん要らないわ、これ」とプレゼントされたリングを突き返すのがクロエという人間ですからね。

保守的なオオエと自由を求めるクロエが、お互いに惹かれ合うことがあるのか。二人の距離は縮まっていくのか。

友情と恋愛の境界線で揺れる二人の姿が、読者を引き込みます。おかけで、他の登場人物と読者はとにかくやきもきするのです。

その揺れが不快ではなく、むしろ心地よい余韻を残すのが有川さんの巧みさですね。

これは『植物図鑑』など、著者の過去作にも通じる有川作品ならではの魅力。今作にも、そんな初々しさと甘酸っぱさが詰まっています。

「付き合うか付き合わないか」あの一番楽しい時期を味わいたい方には、有川さんの恋愛小説がおすすめです。

宝石×恋愛×ユーモアで描く、心地よいラブコメディ

ところで、皆さんは宝石店やブランド店に入るとき、緊張した経験はありませんか?

本作にももちろん、宝石店でのシーンがたくさん登場します。

しかし、堅苦しさを感じるどころか、程よいユーモアが散りばめられていて、最初から最後まで楽しく読める読みやすさがあります。

つい立ち寄りたくなる場所のように感じるのです。

宝石や宝石商の魅力と、やきもきする恋愛を組み合わせ、さらにユーモアを加えることで、読者は物語に引き込まれます。

クロエとオオエだけでなく、登場人物たちの軽快なやり取りが、物語に風通しの良さを生み出しているのです。

「今日はここまでにしよう」と本を閉じようとしても、つい「あと1ページだけ…」と手を伸ばしてしまう。そんな、止められない魅力が本書には詰まっています。

本書の感想

恋愛小説のときめきと、宝石の世界への好奇心。
その両方を満たしてくれる、贅沢な一冊でした。

特に宝石の話は“地球が生み出した神秘”だと感じました。その魅力を引き出す宝石商もデザイナーも間違いなく素晴らしい職業だと思います。

元々パワーストーンなどが好きな私としては、本当に興味深い話がたくさん出てきました。

読み終わってからも『Moixx』さんのサイトを見てみたり、ミネラルショーという鉱物や宝石などの展示即売会を調べたりと余韻を楽しんでいます。

意外とミネラルショーは全国各地で開催されていて、入場料無料だったり、小さなものであれば数百で買えたりするそうです。

それと同時に、有川さんの過去作も読みたいと思い、Xでおすすめ作品を聞いたりもしました。

このように作品を読んだことがきっかけ、興味が広がったり、過去作巡りを決意する。そんな読み終えても楽しみが続くのが、読書良いところなんですよね。

作品を読むことで、新しい興味が生まれたり、読後に次の一冊へとつながっていく。
そんな「読書の連鎖」を感じることができた作品でもありました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

有川ひろさんの『クロエとオオエ』はこちらからどうぞ。

この記事で紹介した過去作はこちら。
■『植物図鑑』|単行本

■『植物図鑑』|文庫本

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