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ご覧いただきありがとうございます。
今回ご紹介する一冊は青山美智子さんの最新刊である「遊園地ぐるぐるめ」です。
この作品はミニチュア写真家の田中達也さんとの共著となっています。
初期作品や前回の『人魚が逃げた』でコラボし、今回はいよいよ共著となりました。

今作の感想やおすすめポイントを
まとめましたので、ご覧ください!
※できる限り具体的なネタバレを避けています。少しでも知りたくない方はご注意ください。
あらすじと概要
発売日 | 定価 | 出版社 |
2025/3/5 | 1870円 | ポプラ社 |
ページ数 | 所要時間の目安 | |
223P | 約2~3時間ほど ※平均的な目安 |
通称『ぐるぐるめ』と呼ばれている遊園地が舞台の物語です。
※ちなみに、通称・正式名称ともに楽しい仕掛けがあるので、本編でお楽しみください。
そこに忙しい日々と尽きない悩みを抱える6人のお客さんが訪れます。
開園とともに非日常のゲートは開かれ、6人の物語が始まります。
物語が進む中、次第に悩みや不安は新たな心持ちへと変わっていきます。
遊園地という”非日常の世界”が物語を楽しさで満たします。
コラボ連作短編集
青山美智子さんの作品は連作短編集の形式で展開されます。
しかし、今作は少し特別な連作短編集となっています。
なんと、作家と写真家のコラボによって生まれた、コラボ連作短編集なんです。
各章ごとに、お互いの物語や写真をインスピレーションにして、そこから新たな物語が紡がれていきます。
異なるジャンルの作品同士が連なっていく、まさに“連作”の醍醐味が詰まった一冊です。
そして、文字とミニチュア写真、それぞれの表現が呼応し合うことで生まれる世界観は、まさに新しい読書体験。
写真集でも小説でもない、でもその両方の魅力がぎゅっと詰まった、そんな一冊です。
本書の魅力を解説
ここからは本書の魅力を深掘りして、
紹介いたします。
温かさに説得力あり
遊園地のゲートをくぐるときの、あの胸がふわっと浮くような感覚。
読み始めから青山美智子さんの優しさや温かさで読者を迎えてくれます。
ちょっと照れてしまうくらい、心がじんわりとあたたまる。そんな優しい始まりが、すっと心に届いてきます。
けれど、私はその優しさを“青山美智子さんの強い意思”だと感じるのです。
とにかく目の前のいかなることも、前向きに捉える。
デビュー作から変わらずに根づいているその信念が、今作にも静かに息づいているのです。
ぜひデビュー作である『木曜日にはココアを』も手に取ってみてください。

そして今回、その優しさに満ちた世界を、田中達也さんがミニチュア作品で表現しているんです。
これがまた、抜群の相性。
文字の世界に、まるでもうひとつの物語が重なるように、静かで豊かな奥行きをもたらしてくれます。
ミニチュア作品の魔法
個人的に、どんな物語にも“余白”があると思っています。
その余白は読者が物語を“自分なりに想像したり、理解するスペース“です。
同時に、読者が作家さんの意図や思いを100%受け取ることは、実に難しいんです。
でもそれは、作家さんへのリスペクトであり、読書の楽しみでもあると思っています。
読者の想像や解釈はその物語の力を100%以上にする可能性があります。
それは、自分にとってこの本は”〇〇と感じる最高の1冊だ”というように、それぞれの感じ方で受け取るものは変わるからです。
そして、今回の物語はその“余白”をより豊かにふくらませてくれるアート作品があります。
ページをめくる手をふと止めて、その余白に想いを巡らせる瞬間。
物語と作品が響き合う瞬間は、まるで“ミニチュア作品の魔法”です。
終盤はとにかく心に響く
ちょっと照れてしまうような、やさしい序盤。
けれど物語が進むにつれて、その温かさはどんどん深みを増していきます。
伏線回収というよりも、『世界はどこかで繋がるもの』というような感覚だと感じました。
終盤は畳み掛けるように青山美智子さんの世界観が広がります。
連作短編集らしく一人一人の視点が変わりながら、最後に線で結ばれる。
そして、過去作との垣根を超えて世界は繋がっていく部分は、感激でした。
※これはもう、青山作品のファンとしては歓喜の瞬間!

最後はやはり、温かさと優しさの余韻を感じながら、幕を閉じるのです。
感想
この作品は隅々まで楽しめる、非日常の世界観が広がります。
表紙、背表紙、裏表紙と装丁をぐるりと一通り眺める。
それだけでも、実はおもしろい発見があるんです。
絵本のようでもあり、どこかアルバムのようでもある。
紙の質感も心地よく、ほんのりとした重みが手に伝わってきます。
実際に手に取ってみると、自然とワクワクしてくるのです。
そんな“読む前から始まる物語”が、この一冊には詰まっています。
そして、日常を忘れさせてくれるような読書時間がここにあります。
ぜひ、隅々まで楽しんでください。
最後まで読んでくださり、
ありがとうございました!
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