【感想と魅力解説】『へびつかい座の見えない夜』砂村かいり

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ご覧いただきありがとうございます。

今回ご紹介する一冊は砂村かいりさんの
「へびつかい座の見えない夜」です。

読み終えた後、私は毎日の読書をコレクション化しようと思いました。本ではなく、“読書そのもの”をです。

毎日読みながら、様々な考えや思いが浮かんでは消えていく。そのことが無性にもったいなく感じたんです。覚えておきたいという意味ではなく、読書の軌跡を残すことで自分にしか味わえない価値が生まれる気がしました。

日々の生活の中で積み上げていることは、自分の人生にとって最高のコレクションです。大げさかもしれませんが、その積み重ねに人生を救われることだってあるのだと思います。

「私には何も誇るものがない」
「なんとなく過ごしている日々を変えたい」

そんな方は、ぜひこの物語を手にして、読んでみてください。

この記事では、できる限りネタバレを避けつつ、その魅力を解説していきます。

皆様の読むきっかけになれば嬉しく思います。

『へびつかい座の見えない夜』のあらすじ・概要

発売日定価出版社ページ数
2025/6/121790円東京創元社256P

価値がないもの。それは他人が決めること。

たとえペットボトル飲料のおまけであっても、自分にとって価値があるものなら無駄なものではないのです。

5つの短編は、決して自分以外には本当の意味で、理解も共感されることもないコレクションが描かれている。

不動産会社で働く瑞季は、「アルパカのヤスオ」のキーホルダーを収集していた。

そんなコレクションを見た、先輩社員である今泉さんから意外な一言が…。

そこから始まったささやかな交流が少しずつ心を動かしていく。

コレクションをテーマとした物語が、あなたの人生を豊かに彩る。

『へびつかい座の見えない夜』の魅力を解説

ここからは本書の魅力を深掘りして、
紹介いたします。

コレクションが生み出す自分だけの世界

この作品は、「何かをコレクションすること」が共通のテーマになっています。

コレクションと聞けば、トレカやキャラクターグッズなどを思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、本書では万人が理解できるとは言えない、ちょっと癖のあるコレクションが取り上げられています。

物語を読み進めていくと、なぜそれを集めているのか、別の意味が見えてきます。ただ好きだから集めているのではなく、自分のしてきたことの軌跡であったり、誰かとの約束であったり。収集の理由や意味は、人それぞれです。

それはコレクションを通じて、自分だけの世界を作り出しているとも言えます。自分の中で足りない何かを埋めるためのものかもしれない。あるいは、人生の安心材料や満足感の代わりになるものなのかもしれません。

だからこそ、他人には理解が難しいけれど、自分にとっては確かな意味があるものだということです。本書を読み終えた時、「この人にとってどういう意味のあるコレクションなのだろう」と、思わず深読みしてしまうような話でした。

大げさかもしれませんが、コレクションというのは人によっては生きていくための糧になるものかもしれません。ぜひ、それぞれのコレクションがどういった意味のあるものなのか、考えてみてください。

変わることも、変えないことも人生の選択肢

本書『へびつかい座の見えない夜』は、“変化”も重要なポイントになっています。

自分にとって意味のあるコレクションには、他者や目の前の世界との境界線の役割も果たします。自分の世界に閉じこもることで、人は大きな安心を得られることもあるのだと思います。

ところが、知らず知らずのうちに、自分の世界のバランスが崩れることがあります。例えば、人間関係に恐れを抱いている人が、いつしか誰かと距離を縮めていることだってあるのです。

それは自分の世界から引っ張り出され、思わず他人の世界に足を踏み入れているようなものです。自分の中で“変化の芽”が顔を出した瞬間でもあります。

ただ、この物語がおもしろいのは、”変化の芽”を感じたところで、必ずしも人が変わることを選ぶわけではないということです。変わることだけでなく、変えないという選択肢も当然あるべきだということに気づかされます。

それは「何も変化がない」というわけではなく、自分の生き方にさらなる覚悟や決意を持った、と言ったほうが正しいのかもしれません。

「変わるべきだ」というメッセージだけではなく、「変える必要はあるのか?」という疑問も感じる。それが、本書の魅力の1つだと言えます。

生きづらさを感じたら、自分の世界を作ろう

「生きづらい世界だな」と感じる方は、本書を読んで何かコレクションすることを始めてはどうかと思います。

コレクションは、つまり「自分の世界を作る」ということです。

コレクションに興味がない、あるいは共感できないという方もいるかもしれません。ただ、ここで言うコレクションは物を集めることに限りません。

自分の世界を作るための材料を集めるということです。それは他人にとっては価値のないものでも、自分にとって意味のあるものであれば十分です。

日々の出来事や感じたことを記録することや、小説を読み知らない世界を覗くことも積み重ねれば立派なコレクションになります。そうして作られた自分の世界があるだけで、生きるための活力に繋がるのだと感じました。

さらに本書を読んでいて、コレクションを「行動」に変えていくことも次のステップなのかもしれないと思いました。

それが仕事になったり、推し活のような活動になったりすれば、自分の軸はさらに明確になります。自分の世界が明確になれば、人生の輪郭もくっきりとしてくるものだと思うのです。

そして、『生きづらい世界』だと感じていた現実に、自分なりの選択肢や道ができてくるのだと思います。

コレクションというテーマを通じて、様々な考えが膨らむ5編でした。

『へびつかい座の見えない夜』の感想

私は『へびつかい座の見えない夜』を読んでいて、思い出したことがあります。学生時代から十数年、1日も欠かさずに日記を書いているという人に出会ったことがありました。

その日に起きたことや考えたことをしっかりと書き留めているそうですが、内容はいつも前向きにまとめていると言っていました。

そしてある日、その人の子どもの性格の話になりました。すると「うちの子はみんな、常に前向き」と話していたんです。その時は、親が前向きだと子どもも前向きになるのだろう、とその程度に考えていました。

ところが、本書を読んだ時に、二つの話が繋がりました。あの人は、日記を通じて、常に前向きでいようとする自分の世界を作ってきたんだなと思ったんです。普段の振舞いや発言がずっとぶれなかったのも、迷ったらいつでも自分の世界へ戻れたからだと思います。

そして、本書の締めくくりである、表題作にも自分をしっかりと持ったぶれない人が出てきます。周囲からは距離を取られている人物ですが、意外な形でコレクションへと関わってきます。

今思えば、『コレクション=自分の世界を作るということ』を理解している人物だったのではないかと思いました。

「生きていくのはしんどいことだ」と思う方は、ぜひこの人に出会ってください。そして、最後のシーンを見届けてみてください。自分の世界を持つ人がいかに人生を楽しんでいるかが分かります。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

砂村かいりさんの『へびつかい座の見えない夜』はこちらからどうぞ。

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