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ご覧いただきありがとうございます。
今回ご紹介する一冊は朝倉かすみさんの
「よむよむかたる」です。
第172回(2024年下半期)直木賞候補作として選ばれ、話題となった1冊です。
※具体的なネタバレを避け、本書の魅力を伝えたいと思います。
あらすじと概要
発売日 | 定価 | 出版社 |
2024/9/19 | 1870円 | 文藝春秋 |
ページ数 | 所要時間の目安 | |
320P | 約5~6時間ほど ※平均的な目安 |
平均年齢85歳の超高齢サークル。
その名は『坂の途中で本を読む会』
最年長92歳、最年少78歳により構成され、小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」に集いし、老人たち。
人の話を聞かないから予定は決まらないし、連絡だって一度で伝わるわけもない。
持病の一つや二つは当たり前で、山あり谷ありの人生を駆け抜けてきた。
今まさに読書会に集まれていることそのものが、とんでもない奇跡。
なぜ老人たちは読書会を愛するのか。
読めば語りたくなり、語れば涙あり、笑いありの最高・最強な読書会がここに。
本書の魅力を解説
ここからは本書の魅力を深掘りして、
紹介いたします。
自由奔放な個性の集結
愛すべき存在として高齢者を舞台に上げた作品。
わがままさを個性として表現し、愛すべき存在を生み出す。そんな朝倉かすみさんの表現力に思わずニヤつく読者も多いかと思います。
登場人物が登場し、話し始めた時点で既に物語の魅力が伝わってくるのです。
特に最高齢92歳を含む女性陣は、会が始まれば様々な方向へと導き、物語に深みを与えます。
年齢や外見の描写では表現しきれない、メンバーの生き様が何気ない所作に表れているのです。
読者が思いを巡らるたびに、山あり谷ありの人生の積み重ねを想像せずにはいられません。
豊かで深みがありながらも、軽やかで自由奔放な個性の集まりです。
会話が織り成す温かな世界観
個性が光るのは、特に会話の部分です。
よむよむ”かたる”というタイトル通り、読むだけでなく、語り合うのが読書会の醍醐味。
会話には北海道の言葉が使われるだけでなく、とある表現の工夫も見られます。
その工夫と程よい淀みが合わさることで、より個性の表現が際立ちます。
独特な会話表現ではあるので、一見読みにくく見えてしまいます。
『エー、マァ、でもなんも問題なし』
というような感じなんですが、むしろ個性的なのに問題なく読めます。
物語の温かみを演出する要素として、会話も重要な役割を果たします。
人生の終盤に寄り添う居場所
課題本の内容とメンバーの人生や読書会の歴史を重ねながら、読書会は進みます。
読書会の中身はもちろんですが、会そのものの存在意義に注目してほしいと感じます。
語り合う場面では、自由奔放に脱線し、一人が語ればお互い呼応していきます。
個性と個性がぶつかり合う時なんですが、同時に会の居心地の良さが分かる瞬間でもあるんです。
人生の終盤に居場所があるという幸福感が読書会の様子から伝わってきます。
共感する時はしみじみと共感する。意見が違った時はタイミングを見て発言する。
互いに共鳴し、尊重し合える仲間たち。
人生の終盤にそっと寄り添う居場所。
それが『坂の途中で本を読む会』なんです。
本書の感想と考察
読書会という狭い舞台設定により、物語はじっくりと温まります。
登場人物の個性を楽しんだり、自分の中でどんどん思いを巡らせたい方にとっては相性の良い1冊だと思いました。
そもそも本書が描く高齢者を『愛すべき存在』と捉えられるかどうかが、一つの分かれ目になると思います。
例えば、介護で疲弊している方と介護を仕事にしている方では、捉え方は違ってくるかもしれません。
しかし、これを自分のことに置き換えてみると、また違った視点になります。
私は、家や職場・学校でもない第3の居場所(サードプレイス)の重要性を感じました。
帯に『成瀬は天下を取りにいく』の著者である宮島未奈さんが、“「また来月」って言い合える仲間”という表現をしています。

将来、そういった仲間と本来の自分を表現できる居場所があれば、人生の終盤もラストスパートのように楽しめるのではないかと思います。
人生という坂を下っていくのではなく、上っていく。そう感じるような人生の終盤でありたいなと感じました。
そうなる為にも、好きなことは好きだと言えば良い。したいことがあれば考えているだけでなく、言ってみることも大事。
今の時代ならSNSで自由に発言できます。そして、SNSそのものに居場所を作ることだって良いと思います。
お互いに揚げ足取りのような使い方をするのではなく、居場所や仲間を作る為に活用できれば良いと思います。
あなたも、ぜひこの読書会メンバーに出会ってみてください。
そして、自分の人生の終盤をどんなものにしたいか、想像してみてください。
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